2006年春の特集
- オラファ(金細工職人)の見る、フィレンツェ・ジュエリー -

ヴェッキオ橋とジュエリー・ショップ

ヴェッキオ橋のショーウィンドウ暖かな陽気とともに観光客が増え、フィレンツェの観光名所の1つポンテ・ヴェッキオ(ヴェッキオ橋)は人で大渋滞している日がほとんどです。
このポンテ・ヴェッキオ上にあるお店のほとんどはジュエリー・ショップ。

1593年にメディチ家のフェルディナンド1世が悪臭を嫌い、肉や、魚屋など悪臭の原因となった店を追い出し、金銀細工の店などと入れ替えてから400年以上、ショーウインドーには今も変わらず金銀細工が所狭し並び、光を放っています。

今回の春の特集はこのポンテ・ヴェッキオに並ぶお店でもたくさん見ることが出来るジュエリーを取り上げます。


同行通訳市内、郊外への同行、オーダーメード店でのショッピングの通訳、 フィレンツェ・シエナの美術館ガイドなどをいたします。
買い物だけでなく、美術の専門ガイドなど、自分達だけのツアーでフィレンツェの町をお楽しみ下さい。
詳しくは下のリンクより。

LinkIconフィレンツェ同行通訳・コーディネート

芸術の都で育った文化としてのジュエリー

芸術の都と呼ばれるフィレンツェの歴史の中で受け継がれ、育ってきたものの1つのジュエリー。

それはただ単なる「お洒落の小道具」ではなく、「文化であり、投資の1つでもある」と言われていることからも、絵画などと並んで芸術の1つとして認められていることがわかります。

中世のフィレンツェでは彫金師は画家、彫刻家と同じような地位を築いていました。
今でいう金銀細工の職人というよりは、宝飾品のほかにも武具、家具など贅沢な家庭用品を製作する芸術家でした。
ただ、家具などに比べてとても小さな宝飾品は作者が限定できないものがほとんどです。今日も有名な芸術家 Donatello(ドナテッロ)でさえ一彫金師として、ほかの彫金師と同じ立場で工房の仕事をやっていたといわれる状況では仕方のないことなのでしょう。

彫金師として名前が残るのは、ルネサンスの幕開けとなったサン・ジョヴァンニ洗礼堂(大聖堂(ドゥオモ)向い)の2番目の扉のコンクールに優勝した Lorenzo Ghiberti(ロレンツォ・ギベルティ)でしょう。
このコンクールには彫刻家のみならず、たくさんの彫金師が参加していました。

芸術の都で育った文化としてのジュエリーとスタイル

フィレンツェ・スタイルフィレンツェ的なジュエリーといえば、フィレンツェ・スタイルと呼ばれるジュエリー様式が有名です。

このスタイルが確立されたのは1500年半ば、Benvenuto Cellini(ベンヴェヌート・チェッリーニ)によってでした。
メタルを糸鋸を使って透かし彫りし、やに台の上に乗せて、鉄のたがねを使って叩いて形を作り、表面に彫りを施したもの。
ルネサンスの自然志向に伴い、典型的な形は葉っぱで、この形がフィレンツェの伝統的な紙に描かれた模様と同じだったために「フィレンツェ・スタイル」と呼ばれるようになりました。


時代とともに移り変わる流行

中世のころ、現在のように男女間のジュエリーにはっきりとした差はありませんでした。
初期は宝石の代わりに色つきのガラスが使われ、貴族の男性は刀のさや、ベルト、ブローチ、女性はブローチ、ネックレス、イヤリング、ブレスレットを好んで身に着けていました。

1300年後半に襟ぐりの開いたドレスが普及したことに伴い、ネックレスにペンダントヘッドがついたものが流行。

この時代、1番普及したのはマントを止めるためのブローチという実用的なものでした。
指輪はすべての指につけるのが普通でした。

婚約指輪、結婚指輪というと左手の薬指を思い浮かべるかと思うのですが、この時代は右手の中指だったそうです。
この時代の特徴として、今ではあまり見られない頭部を飾るためのティアラなどがあります。
貴族の娘たちにとって宝石付きの髪飾りはとても大事なものでした。
宗教に関わるロザリオ、ペンダント型の聖骨箱なども普及しました。

ルネサンスの特徴は鎖付きのペンダント、またはコルセットに付けられたペンダント。

金素材で宝石が留めてあり、たいがい妻または夫の名前が刻まれていました。
流行したのはイヤリング、ブレスなど一揃いの宝石を身に着けることで、セットの中にはネックレスのほか、ベルトまでが入っていました。
ほかに流行したものにはパールまたは雫型の宝石を使ったイヤリングでした。

男性用の帽子のブローチ、金のロケットペンダントに伝統的な神話のシーンの一部を入れたものなども普及。
指輪の中には、外からはわからない小さな秘密の空間があるものがありました。
その空間を聖遺箱、香水入れ、または亡くなった人の小さな骨を入れて形見などに利用していました。

1600年代はパールの時代。

16世紀のフランスではパールは顔色が良くなると信じられ、重宝されていました。
パールのネックレス、イヤリングは帽子や洋服に縫い付けられたもののように身に付けられていたそうです。

宝石はインドから輸入されるようになり、新しいカット、磨き方を加えられて流行しました。
ブローチはダイヤ付きで大きいのが特徴です。

このようにその時代の流行に対応しながら、ジュエリーを作ってきたのがジュエリー職人です。
現在は量産傾向、コスト削減などを目的に機械化が進み、職人の数も減ってきています。
その中、フィレンツェにはいまだに1500人の職人が存在するといわれています。
一握りの40人ほどが一流の技術を持った職人として認められているそうです。

ジュエリー職人のお仕事

現在の職人の仕事を見てみましょう。
先に書いたフィレンツェスタイルと呼ばれるジュエリーにはおおまかに3種類の職人が関わります。

彫金職人オラフォジュエリーの基礎部分、ワックス、貴金属を使って形を作るオラフォ(orafo)と呼ばれる彫金職人=ジュエリー職人

彼らは様々な道具を使って作業します。
金属を火にかけて溶かしたり、延ばしたり、金槌でたたいたりした後、糸鋸で切ったり、鑢でやすったり、金属同士をロウ付けしたりしながら、形を作る作業が中心。
熟練の職人が10人いれば、基本作業は一緒でも細部は10人それぞれにそれぞれのやり方があり、「これが正しい」とか「こうするべき」と細かいところまで断定できないのがこの世界です。


次は彫金職人が作った基礎に石を留めるインカッサトーレ(incassatore)と呼ばれる石留め職人。

フィレンツェ・ジュエリーパヴェと呼ばれるメレダイヤがちりばめられた指輪などをよくみかけると思いますが、この石も1つ1つも職人の手で留められた物。


orafo fiorentino手に取ったときに石がどのように留められているか、よく観察してみてください。
1つ1つが小さい爪で留めてあるのが見えると思います。

ほかの2つの職人の仕事がある程度は機械化されても、石留めはとてもデリケートな作業で人間の目で確認しながらではないと進められず、機械に頼ることが出来ないそうです。

安い値段で売られているものの中には、一見石留めされているように見えて、接着剤を使って接着されているものもあります。


もう1つの職人は金属に彫刻を施すインチゾーレ(incisiore)と呼ばれる彫刻職人。

インチゾーレ(incisiore)彫刻刀のような道具を使って、金属に模様を施していきます。銅版画を思い出していただければなんとなくわかるでしょうか?
1つ1つラインの光り方、いかになめらかな曲線か、などから職人の腕の違いを見ることが出来ます。


職人技表面全体に細かく彫刻されているのがわかりますか?こうやって彫刻が施されることにより、平面だった金属に表情がつきます。


1500人の職人がいるとはいえ、伝統工芸を後世に受け継いでいくことの難しさは世界各国一緒で、職人希望の若者が徐々に減っているそうです。

その昔は工房に直接入り、そこで修行し、数年後、または十数年後に独り立ちする人がほとんど。
彫金職人暦50年になる Luciano Quirici(ルチアーノ・クイリチ)氏は

「最初の8年は職人がやることを見ているだけだったよ。あのころはそれが普通だったな」

と語ります。

「ただ見ているだけでは何のためにもならないようだけど、それ(職人の作業を見ること)がどんなに大事かは後々にわかる。今の若者にその機会が少ないのが残念だ」

とも語りました。
彼の手にかかると無機質な金属があっという間にいろんな形に変わります。
50年の経験に敬服。

工房の数も激減している今、技術習得の場は学校へと変わりました。
フィレンツェには数多くの彫金学校があります。

その中の1つ PERSEO(ペルセオ)の校長 Massimo Campaioli(マッシモ・カンパイオーリ)氏は、「こういう時代の流れの中、本物の職人の技術を受け継いでいける場を作りたかった」と開校した理由を語ります。

この学校は「技術を学ぶこと」が1番の目的にあげられ、彫金、石留め、メタル彫刻などのコースの先生は全員20年以上の経験を持つ職人で、生徒はイタリア人に限らず、世界各国から集り様々な技術を学んでいます。
現役のトップレベルの職人から技術を学べるというのも、この街ならでは、ではないでしょうか。

PERSEO(ペルセオ)

住所
Via de' Rustici, 10
50122 Firenze
TEL / FAX
055 284996
ホームページ

spe200602_14.jpg

フィレンツェのショップをのぞいてみよう

実際のお店ものぞいてみましょう。
今回は今でも手作りにこだわり、職人を抱えるお店へ伺いました。

まずはポンテヴェッキオの角にお店を構えて41年の「S.Vaggi」

S.Vaggi

住所
Ponte Vecchio,20r 50125
TEL
055-294290
ホームページ

S.Vaggi

社長の Roberto Vaggi(ロベルト・ヴァッジ)氏にお話を聞かせていただきました。

自身が職人でもあったロベルト氏の父が構えたこのお店は、今でも商品のほとんどが職人による手作りのもの。
1965年にお店を構えた1年後にアルノ川の大洪水が起こり被害を受けたものの、幸いなことに貴金属は水に濡れても修復可能だったため、発見されたものの大半は修復されたとのこと。

このときに活躍したのも職人です。
現在は15人ほどの職人をかかえ、1つ1つの商品がロベルト氏の厳しい目で検査され、その検査を通ったものだけが保証書を付けてお店に並べられています。

手作りの商品は、ワンサイズしか置いてない場合が多く、同じ商品が欲しい場合は受注制作になり、その方にあったサイズ、形を決め、配送になるそうです。

見せていただいたフィレンツェ・スタイルを発展させた商品の1つ。

Roberto Vaggi

職人技

これは蜂の巣と呼ばれる5角形の透かし模様がベースで、1つ1つの穴は細い糸鋸で、表だけではなく、裏側も削って形が作ってあります。
その上にはめ込み細工、彫刻などが施されており、何十年の経験がある職人でも1個を仕上げるのに2カ月ほどかかる指輪。
とても繊細な作りになっているため、しっかりとした技術を要されるものです。

次もポンテヴェッキオ上にお店を構える「MELI GIOIELLI」。

MELI GIOIELLI

住所
Ponte Vecchio,51r
TEL
055-264125
ホームページ

MELI GIOIELLI

創設者のMeli氏もジュエリー職人。

フィレンツェ・スタイルのジュエリーがメインのお店が並ぶ中、ここはエトルリア・スタイルのジュエリーを並べます。

エトルリア人スタイルのジュエリー約3000年前、イタリア・トスカーナ地方周辺にローマ人より前に住んでいた「エトルリア人」が使っていた技術、作風を現代的にアレンジした指輪、ネックレスなどが並びます。

この技術は「マードレビタート」と呼ばれ、細い金線にぎざぎざの切り込みが入っているものを、S字、C字に曲げて形を作り、エトルリア人のジュエリーには欠かせない金の粒々と組み合わせ、ロウ付けして様々なジュエリーを作ります。


フィレンツェ・スタイルのジュエリーお店にはもちろんフィレンツェスタイルのジュエリーも置いてあり、雰囲気の違いを比べるのも楽しいです。


ジュエリー・ショッピングを楽しむために…

ちょっと敷居が高いジュエリー店でのお買い物のコツを少し。

まずはショーウインドーに飾られている商品を眺めて、お気に入りが見つかったらお店に入ります。
営業時間内なのに、入ろうとしても扉が開かないことがあります。これは防犯のために鍵をかけているところが多いためなので、まずはブザー探して鳴らしましょう。
お店に入ったら、興味のあるジュエリーを伝え、手にとって見せてもらい、試してみます。

もし気に入らなかったり、値段が予算と合わなくても、すぐにお店を出ず、自分の好みにあうジュエリーがあるかどうか聞いてみましょう
販売員はお客さんの希望に沿えるように応対してくれ、ショーウインドーには飾られていなかったジュエリーを金庫などから取り出して見せてくれます。
「どうしても欲しい。でも予算よりちょっと高い。でも欲しい…」となってしまった場合、思い切って少し値切ってみるのも手かもしれません。
高価なものほど意外に対応してくれたりします。

指輪はサイズが問題。
ぴったりならもちろん即買い出来ますが、合わない場合は調整してもらうことになります。
たいていのお店では2時間もあれば直してくれます。
注文になる場合は配送という形になるので、手続きが必要です。

ペンダントの場合、ペンダントヘッドと鎖が別売りの場合は、取り揃えてある鎖を見せてもらって、自分の気に入った鎖を買うことが出来ます
この場合、鎖をグラム売りしているところも多いので、何グラムか聞いて、値段を計算してもらいましょう。

ポンテ・ヴェッキオ旅の思い出に、フィレンツェの伝統が受け継がれる手作りのジュエリーをじっくり探してみてはいかがでしょうか?
「一生モノ」と思い切って買ったものが、思い出とともにいつか次の世代に受け継がれていくのも素敵ですよね。


LinkIcon執筆者 Naomi Tachibana のホームページへ

この記事を執筆した、「なお」こと 「naomi Tachibana」の作品も掲載されているジュエリー写真集。

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